インビザラインの新機能「Invisalign® 3D Face Scan」— 歯並びだけでなく、お顔全体の調和を見ながら治療計画を立てられるようになりましたBLOG

こんにちは、東京都千代田区の矯正歯科専門医院・神保町矯正歯科クリニック院長の東野良治です。

2026年7月22日より、インビザライン・システムの新しい機能である「Invisalign® 3D Face Scan(インビザライン 3Dフェイススキャン)」が、日本でも正式に利用できるようになりました。

ひと言でいえば、お顔全体を3次元のデータとして記録し、それを矯正治療の設計画面の中で一緒に確認できるようになった、という機能です。

当院では正式リリースに先立ち、2025年末から半年以上にわたって「先行使用ドクター」としてこの機能を日々の診療で使用してまいりました。

また、2026年8月7日より、インビザライン・ジャパン合同会社が主催するオンラインセミナー(ウェビナー)「顔貌データが変える次世代の治療計画」が、全国の歯科医師の先生方に向けて配信されています。私は矯正歯科医の立場から「矯正診療における顔貌データ活用の臨床的価値」というテーマでお話をさせていただきました。

今回のブログでは、そこでお話しした内容をもとに、この新しい機能が矯正治療をお考えの患者様にとってどのような意味を持つのかを、できるだけ専門用語をかみくだいてご紹介したいと思います。

 

1. 矯正治療のゴールは「歯並び」だけではありません

矯正治療のゴールは、もちろんきちんとかめる歯ならびをつくることです。これは矯正歯科医にとって、けっして譲れない部分です。

ただ、日々のカウンセリングで患者様のお話をうかがっていると、多くの方が気にされているのは、かみ合わせそのものだけではないことにも気づかされます。

  • 口元の出ている感じを何とかしたい
  • 横顔をきれいにしたい
  • 笑ったときの歯の見え方を良くしたい
  • 笑うと歯ぐきが見えすぎるのが気になる

このように、患者様の一番のご希望は、「お顔」「口元」「笑顔」と強く結びついていることが少なくありません。写真や動画で自分の顔を見る機会が増えた今、その傾向はいっそう強くなっているように感じます。

ですから矯正歯科の診断では、歯ならびやかみ合わせ、レントゲンの分析だけでなく、お顔全体のバランスを同時に評価することがとても大切になります。この考え方自体は決して新しいものではなく、矯正歯科の世界では以前から「唇や頬などのやわらかい組織との調和を重視して治療目標を決めるべきだ」という考え方が提唱されてきました。

とくにマウスピース型矯正装置(アライナー)による治療では、前歯をどれくらい後ろに下げるか、どの角度で立てるか、上下方向にどれくらい動かすか、といったことを設計画面の上でかなり細かく決めることができます。細かく決められるからこそ、その最終的な歯の位置が、お顔の中で本当に調和しているのかを確認する視点が重要になるのです。

2. これまでの矯正診断で見ていたもの

従来の矯正歯科の診断では、次のような資料を一つひとつ確認していきます。

  • 歯型・歯列のデータ
  • セファロ(頭部を横から撮影した規格レントゲン)
  • パノラマレントゲン
  • お顔の写真(正面・横顔)
  • お口の中の写真

これらはいずれも大切な資料ですが、基本的には「平面(2次元)の資料」です。ですから、「この歯をこう動かすと、横顔はどう変わるだろうか」という部分は、最終的には歯科医師が頭の中で組み立てて判断し、それを言葉で患者様にお伝えする必要がありました。

これまでの矯正診断では、複数の2次元資料を組み合わせて、歯並び・かみ合わせ・お顔・笑顔を総合的に評価してきました。

その後、歯科用CT(CBCT)のデータを治療計画に取り込めるようになり、歯の頭の部分だけでなく、歯根(歯の根っこ)や、それを支える骨の中を確認しながら歯を動かすことができるようになりました。「骨の中で安全に動かす」という点で、これはとても大きな進歩でした。

そして今回の3D Face Scanによって、そのさらに先――「お顔の中で、歯をどこに置くか」を日常の診療の中で考えられるようになりました。

矯正診断で「見えるもの」は、歯ならび → 歯根と骨 → お顔全体、と段階的に広がってきました。

3. Invisalign 3D Face Scan とはどんな機能か

3D Face Scanは、iPhoneやiPadを使ってお顔を3次元的に撮影し、そのデータを治療計画ソフト「ClinCheck®(クリンチェック)」の中に取り込む機能です。

クリンチェックとは、インビザライン治療において「今の歯並びから、最終的な歯ならびまで、歯が1ステップずつどのように動いていくか」を歯科医師が設計していく画面のことです。患者様にも、治療を始める前にご覧いただいているあの画面です。

これまでこの画面に映っていたのは、歯と歯ぐきだけでした。そこにお顔のデータが重なることで、次のようなことをその場で一緒に確認できるようになりました。

・この歯の位置にしたとき、口元はどのように見えるのか
・この動かし方をしたとき、笑ったときのラインはどうなるのか
・抜歯をする場合としない場合とで、口元の印象はどちらの方向に変わりそうか

「特別な検査」ではなく、いつもの精密検査の中で受けていただけます

実は、お顔を3Dで記録すること自体は、以前から技術的には可能でした。ただしそれには専用の大きな装置が必要で、患者様にとっては「別の日に、わざわざ受けに行く特別な検査」になりがちでした。そのため実際には、ごく限られた方だけが受けるものにとどまっていました。

今回の3D Face Scanでいちばん大きいのは、その顔の3D評価が、当院で精密検査を受けられるすべての患者様にとって、身近なものになったことだと思っています。

大がかりな装置に入っていただく必要はありません。別の日にご来院いただく必要もありません。いつもの精密検査の流れの中で、数分お顔を撮影させていただくだけです。

「特別な症例のときだけの特別な検査」が、「どなたにも当たり前にお使いいただける、診断の一部」になった。私はこの点にこそ、この機能のいちばんの価値があると考えています。

4. 3D Face Scan で確認する「5つの視点」

ただ「お顔が3Dで見える」というだけでは、意味は十分には引き出せません。大切なのは、どのような視点でお顔を拝見するかです。当院では、次の5つに整理して確認しています。

顔ぜんたいのバランス、左右差、横顔のライン、笑ったときの見え方、そして口元の変化のシミュレーション。

とくに4つ目の「笑ったときの見え方」は、患者様のご満足に直結する部分です。前歯が何ミリ見えるか、歯ぐきがどのくらい見えるか、笑ったときに前歯がえがくカーブが下唇のラインと調和しているか。こうしたことを見ながら、上の前歯を上下方向にどれくらい動かすかを検討していきます。

「かみ合わせは良くなったけれど、笑ったときの印象は思っていたのと違う」——そうしたずれをできるだけ小さくするために、この視点はとても大切だと考えています。

5. 撮影はとてもシンプルです

「顔の3Dスキャン」と聞くと、大きな装置に入るところを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、そのようなことはありません。

当院では、精密検査の中でiPadを使って撮影しています。お痛みはまったくなく、放射線も使いません。所要時間はごく短く、いつもの写真撮影の延長のような感覚で終わります。

撮影していただくのは、基本的に次の2種類の表情です。

①軽く口を閉じた、リラックスした状態
②大きく笑った状態(スマイル)

この2つを撮らせていただくことで、「ふだんの表情」と「笑ったとき」の両方について、口元の変化を確認できるようになります。

撮影したデータはそのまま治療計画に取り込まれ、ご説明のときに一緒にご覧いただけます。

撮影のとき、ご協力いただきたい4つのこと

きれいなデータを撮るために、少しだけご協力をお願いしています。難しいことはありませんので、どうぞご安心ください。

  • お顔の向き/まっすぐ前を向いて、あごを引きすぎず、上げすぎずに。スタッフがお声がけしますので、そのままで大丈夫です。
  • 表情/口を閉じるときは、唇に力を入れずに自然に。笑うときは、いつもどおりの笑顔でお願いします。作り笑いよりも、ふだんの笑い方のほうが役に立つデータになります。
  • 髪・メガネ/前髪は、できればピンなどで上げていただけると助かります。輪郭やおでこが隠れると、お顔の形を正しく読み取れないためです。メガネも一度お外しいただきます。
  • お化粧・アクセサリー/ふだんどおりで問題ありません。大きなイヤリングやマスクだけ、撮影の間お外しいただくことがあります。

6. 当院での実際の流れ

当院では、以下のような流れで診療を進めています。3D Face Scanが加わったのは、②精密検査と③診断・ご相談の場面です。

初診相談から保定まで、デジタルでつながった流れの中に、お顔のデータが組み込まれました。

精密検査・診断のとき

精密検査では、口腔内スキャン、レントゲン・CT撮影、お顔とお口の写真撮影に加えて、3D Face Scanの撮影、むし歯のチェック、舌や唇の力を測定する検査などを行います。

お口のまわりの筋肉の状態は、治療後の安定にも関わってくるため、当院では以前から大切にしている検査です。

そして診断のご説明のときに、治療方針ごとの「歯ならびの変化」と「口元の変化」を、実際に画面でご覧いただきながらご相談するようにしています。ここが、これまでといちばん変わったところです。

7. こんなお悩みの方に、とくにお役立ていただけます

半年以上使ってきて、次のような場面でとくに役立つと感じています。

  • 抜歯するかどうかで迷っている方/どちらの方針でも治療が可能な、いわゆる「境目」のケースがあります。これまでは言葉でご説明するしかありませんでしたが、今は両方の方針で口元がどちらの方向に変わりそうかを見比べたうえで、ご自身で選んでいただけるようになりました。
  • 口元の出ている感じを気にされている方/「どのくらい変わるのか」がイメージしにくい部分です。方向性を目で見て共有できると、ご不安がずいぶん軽くなるようです。
  • 「下がりすぎないか」が心配な方/口元を引っ込めたいけれど、下がりすぎるのは避けたい。この繊細なご希望は、数値だけでは読み取れません。画面を一緒に見ながら「このあたりですね」とすり合わせができるのは、大きな進歩だと感じています。
  • 笑ったときの見え方が気になる方/歯ぐきの見え方や、笑ったときの歯のカーブを見ながら計画を立てられます。
  • お顔の左右差が気になる方/顔の正中と歯の正中のずれ、口角の高さの違いなどを、立体的に確認できます。

 

AIによる自動作成となります。通常のイメージとかけ離れたシミュレーションになることもございます。ご注意ください。

 

患者様にとってのメリットを、あらためて整理すると

① 治療のゴールを「目で見て」共有できる/言葉だけの説明より、ずっと具体的にイメージしていただけます。

② ご自身が納得して方針を選べる/選択肢を見比べたうえで決められるので、「なんとなく先生に任せた」で終わりません。

③ 笑顔の見え方まで含めて計画できる/かみ合わせと見た目の両方を、同じ画面の上で検討します。

④ 特別な日を設けずに受けられる/いつもの精密検査の中で、数分の撮影で完了します。

⑤ 治療前後の変化を客観的に残せる/3Dのデータとして記録が残るため、治療後に「どう変わったか」を振り返っていただけます。

※適応や進め方は、お口とお顔の状態によって異なります。感じられる変化にも個人差があります。

8. 大切なお約束:シミュレーションは「結果の保証」ではありません

ここまでメリットを中心にお話ししてきましたが、もっとも強調しておきたいのは、この点です。

お顔のシミュレーション画像は「予測画像」であって、「治療結果を保証する画像」ではありません。

唇や頬などのやわらかい組織の反応には、大きな個人差があります。同じように前歯を後ろに下げたとしても、唇がどのくらい後退するかは患者様によって異なります。唇の厚み、筋肉の緊張の強さ、唇が自然に閉じられるかどうか、あご先の筋肉の状態、年齢、性別、もともとのお顔立ちなど、実にさまざまな要素が関係します。

また、3D Face Scanそのものも、撮影時の表情や頭の向き、唇の閉じ方、笑い方、お部屋の明るさなどの影響を受けます。

ですので、当院ではシミュレーションをご覧いただく際、「この通りになります」という説明はいたしません。お伝えしているのは、「この治療方針では、このような方向の変化を目指します」ということです。

3D Face Scanは、結果をお約束するための道具ではなく、患者様と歯科医師が治療のゴールを共有し、納得して方針を選ぶための「話し合いの道具」である。私はそのように考えています。

 

*また、まれにお顔のシミュレーション画像が完成してこないエラーになる場合がございます。この場合は、再制作できませんので予めご了承ください。(検査費用の返金もございません。

9. よくあるご質問

Q. 撮影に痛みや体への負担はありますか?

A. ありません。お顔にiPadを向けて撮影するだけで、機械が触れることも、放射線を使うこともありません。所要時間もごくわずかです。

 

Q. 別の日に予約を取り直す必要はありますか?

A. 必要ありません。精密検査の流れの中で一緒に撮影させていただきます。

 

Q. インビザライン以外の装置で治療する場合にも使えますか?

A. この機能はインビザライン・システムの一部ですが、そこで得られたお顔の情報は、装置の種類にかかわらず「どこに歯を置くか」を考えるうえで参考になります。詳しくは診療時にご説明いたします。

 

10. まとめ

3D Face Scanの本質は、「お顔をスキャンできること」ではありません。「お顔の中で、歯の位置を考えられること」にあります。

これまで矯正歯科医は、歯ならび、かみ合わせ、レントゲン、お顔の写真をもとに、お顔と歯ならびの関係を頭の中で統合して考えてきました。3D Face Scanによって、その考える過程が目に見えるものになり、患者様と共有できるようになったことが、最大の変化だと感じています。

矯正治療は、決して短くない時間をかけて進んでいくものです。だからこそ、はじめる前に「どこを目指すのか」を一緒に確認し、納得したうえでスタートを切ることが何より大切だと考えています。

当院では引き続き、デジタル技術を活用しながら、「きちんとかめること」と「お顔全体の調和」の両方を大切にした矯正治療をご提供してまいります。

矯正治療について気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。ご相談・カウンセリングは無料です。

神保町矯正歯科クリニック 院長 東野 良治

【注記】

・本記事の内容は、インビザライン・システムを使用する一歯科医師の個人的な見解および経験に基づくものであり、アライン・テクノロジー社の公式見解や、製品の性能・臨床的有効性を保証するものではありません。

・シミュレーション画像は治療結果を保証するものではありません。治療の効果や経過には個人差があります。

・マウスピース型矯正装置による治療は、症例によって適応が異なります。適応の可否や治療方針については、診療時に個別にご説明いたします。

・「Invisalign®」「iTero」「ClinCheck®」は Align Technology, Inc. またはその関連会社の商標です。本文中では初出のみ商標記号を付し、以降は省略しています。

 

 

 

 

歯並びでお悩みの方は是非ご相談ください

院長:東野 良治

歯学博士・矯正歯科専門医である東野良治院長が対応いたします。些細なことでも構いません。お気軽にご相談ください。

電話:03-5577-6475

メール:こちらから

住所:
〒101-0051
東京都千代田区神田神保町1-10-1 IVYビル3F
神保町駅A5出口出てすぐ

東野良治院長の経歴や所属、学会発表など、より詳しくはこちら

投稿日:2026年8月30日  カテゴリー:大人の矯正治療, 学会・セミナー, 歯並び・かみ合わせ・矯正治療

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